最近の論文発表(原著)

小胞体膜タンパク質 VMP1 の新規機能を発見(森下 et al., eLife)

2019年09月17日 最近の論文発表(原著)

Hideaki Morishita, Yan G Zhao, Norito Tamura, Taki Nishimura, Yuki Kanda, Yuriko Sakamaki, Mitsuyo Okazaki, Dongfang Li, Noboru Mizushima
A critical role of VMP1 in lipoprotein secretion
eLife, 2019, Sept 17 DOI: 10.7554/eLife.48834

小腸から吸収した脂質や、肝臓で合成した脂質を全身の組織に供給するためには、脂質をリポタンパク質という水に溶けやすい状態にする必要があります。リポタンパク質は、小胞体の膜内で合成されたコレステロールや中性脂質が小胞体内腔へ離脱し、リン脂質一重層とアポリポタンパク質に取り囲まれることで形成されます(図1)。しかし、この過程の分子メカニズムには不明な点が多く残っています。

今回私たちは、オートファジーに必要な小胞体膜タンパク質VMP1の生理機能を解明するため、VMP1を欠損させたゼブラフィッシュやマウス(全身、小腸上皮細胞特異的)を作製し解析しました。その結果、VMP1はオートファジーだけでなく、小腸上皮細胞、肝細胞、臓側内胚葉細胞において、リポタンパク質の小胞体膜から内腔への離脱の過程にも必要であることがわかりました(図1)。最近、ヒトVMP1遺伝子の一塩基多型(SNP)と血中のコレステロール値との関連が報告されていますので、本研究の成果は、リポタンパク質の形成・分泌機構の解明につながるとともに、脂質異常症などの疾患の理解に貢献することが期待されます。

なお本研究では、VMP1がリポタンパク質だけでなく脂肪滴の小胞体からの離脱にも関与する可能性を示す結果を得ています(図1)。オートファジー、リポタンパク質形成、脂肪滴形成のいずれの過程でも小胞体の膜の性質や形態がダイナミックに変化しますので、VMP1は小胞体膜の恒常性維持やリモデリングに関与している可能性が考えられます。

本研究は、マサチューセッツ州立大学のZhao Yan(チャオ・ヤン)博士、東京医科歯科大学の酒巻有里子氏、岡崎三代名誉教授らと共同で行いました。

プレスリリース


図1. 小胞体膜タンパク質VMP1の機能のモデル図

VMP1はオートファゴソーム、リポタンパク質、脂肪滴が正常に形成されるために必要である。いずれの過程でも小胞体膜がダイナミックに変化することから、VMP1は小胞体膜の恒常性維持や形態変化などのリモデリングに関与すると考えられる。

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