最近の論文発表(原著)

WIPIファミリータンパク質のオートファジー機能の網羅的解析と神経変性疾患における意義 (清水 et al., Hum Mol Genet.)

2023年07月06日 最近の論文発表(原著)

Takahiro Shimizu, Norito Tamura, Taki Nishimura, Chieko Saito, Hayashi Yamamoto, Noboru Mizushima

Comprehensive analysis of autophagic functions of WIPI family proteins and their implications for the pathogenesis of β-propeller associated neurodegeneration

Hum Mol Genet. 2023 Jun 26;ddad096. doi: 10.1093/hmg/ddad096.

私たちを含む共同研究グループは神経変性疾患BPAN/SENDAの原因遺伝子がWDR45(WIPI4をコード)であることを2013年に報告しました.WIPI4はPROPPINファミリーに属し,哺乳類にWIPI1–4の4つが存在します.酵母PROPPINs(Atg18, Atg21, Hsv2)はオートファジーにおいて重要なタンパク質ですが,WIPI1–4のオートファジー機能は十分に調べられていませんでした.そこで最近私たちの研究室で開発した高感度で定量性に優れるHaloTagプロセッシングアッセイを用いてWIPI欠損細胞のオートファジー活性を網羅的に測定しました.その結果,既報告で重要とされたWIPI2のみならず,WIPI3とWIPI4も哺乳類オートファジーに部分的に必要であることを明らかにしました.

BPANは神経発達異常と神経変性の2つの側面を持つ疾患です.HaloTagプロセッシングアッセイを用いて,疾患関連変異がWIPI4のオートファジー機能に与える影響を調べました.その結果,オートファジー異常がBPANの神経発達の異常と関連することが示唆されました.一方,神経変性とオートファジー異常の明確な関連は認められませんでした.この結果は,WIPI4が非オートファジー機能を持ち,非オートファジー機能の異常が神経変性の原因となっていることを示唆しています.今後遺伝学的診断の発達と共に,神経変性をきたす前にBPANと診断される症例が増加することが予想されます.これらの症例で神経変性の進行を抑制するためには,今後WIPI4の非オートファジー機能の究明が必要であると考えられます.

 

 

 

お知らせ一覧にもどる

ページトップへ戻る

Mizushima Lab