最近の論文発表(原著)
Syntaxin 17の優勢阻害変異体を用いたオートファゴソームの蓄積方法の開発(植松 et al., Autophagy)
2017年07月27日 最近の論文発表(原著)
Uematsu M, Nishimura T, Sakamaki Y, Yamamoto H, Mizushima N.
Accumulation of undegraded autophagosomes by expression of dominant-negative STX17 (syntaxin 17) mutants.
Autophagy, 2017 July 27 DOI: 10.1080/15548627.2017.1327940
オートファゴソームを単離・精製することは、オートファゴソームの物理学的・生理学的性質を調べる上で重要であると考えられます。しかしオートファゴソームは完成するとリソソームと融合してオートリソソームとなるため、精製・分析することは困難でした。
今回私たちは、オートファゴソームとリソソームの融合を仲介するSNAREタンパク質であるsyntaxin 17のN末端領域欠損体(STX17ΔNTD)が優勢阻害効果を示すことを新たに発見し、さらに、それを用いて簡便にオートファゴソームを蓄積させる系を構築しました。
STX17ΔNTD変異体をテトラサイクリン誘導発現系に組み込んだ細胞株を作製したところ、テトラサイクリン添加によってリソソームと融合する前の完全なオートファゴソームが蓄積することが示されました(図1)。
更にこの細胞株の抽出液を密度勾配遠心法で分画したところ、テトラサイクリン誘導発現依存的に、内因性のsyntaxin 17やオートファゴソームマーカーであるLC3が濃縮される分画を分離することに成功しました(図1)。
この分画には他のオルガネラマーカーがほとんど濃縮されないことから、オートファゴソームが効率よく分離されていることが示唆されました。本研究は、オートファゴソームの性質をさらに明らかにしていく上で有用なツールであると考えられます。