最近の論文発表(原著)

繊毛形成を制御する新規オートファジーアダプターNEK9(山本 et al., Nat. Commun.)

2021年06月02日 最近の論文発表(原著)

Yasuhiro Yamamoto, Haruka Chino, Satoshi Tsukamoto, Koji L. Ode, Hiroki R. Ueda, Noboru Mizushima
NEK9 regulates primary cilia formation by acting as a selective autophagy adaptor for MYH9/myosin IIA
Nat Commun 2021 Jun 2;12(1):3292. doi: 10.1038/s41467-021-23599-7.

繊毛は、細胞表面から突出した細胞小器官で原生動物からヒトに至るまで真核生物に広く保存された細胞小器官です。そのうち一次繊毛は非運動性で、細胞外の環境を感知して細胞内に伝えるアンテナとして働き、胚発生、細胞分化、臓器形成などにおいて重要です。一次繊毛が形成されるときには、細胞内のダイナミックな変化を伴いますが、今回、オートファジーがこの過程に重要であることを明らかにしました。

オートファジーによる分解は主に非選択的(ランダム)ですが、傷ついた細胞小器官、変性たんぱく質、細胞内の病原体などを選択的に分解する選択的オートファジーという機構も存在することが分かっています。我々は、オートファジーで分解される新規選択的基質を同定する目的でオートファゴソームに結合するたんぱく質を網羅的に検索したところ、繊毛機能に関連することが示唆されていたNEK9を同定しました。さらに、NEK9は、一次繊毛形成の抑制因子であるMYH9と結合して、MYH9を選択的オートファジーによる分解に導くアダプターとして機能することを見いだしました。NEK9がオートファゴソームに結合できないようにした細胞を作製したところ、MYH9は分解されず、一次繊毛の形成が顕著に抑制されました。また、同様の変異を導入したマウスでは、腎臓の近位尿細管細胞の一次繊毛形成が阻害され、細胞が腫大しました。以上のことから、NEK9を介した選択的オートファジーによるMYH9の選択的分解は一次繊毛の形成に重要であると考えられました。

オートファジーによる繊毛形成制御は哺乳類などの陸上脊椎動物だけにみられるので、この機構が腎臓の陸上生活への適応に重要であった可能性が考えられます。また、本研究成果は、オートファジーの生理的意義や、繊毛形成の異常を伴う疾患の理解につながると考えられます。

本研究は、東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室の上田泰己教授、大出晃士講師、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所生物研究推進室の塚本智史主幹研究員と共同で行いました。

プレスリリース

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