最近の論文発表(原著)
Atg16L1の隔離膜への選択的ターゲッティング機構の解明(西村 et al., EMBO Rep)
2013年03月01日 最近の論文発表(原著)
Taki Nishimura, Takeshi Kaizuka, Ken Cadwell, Mayurbhai H Sahani, Tatsuya Saitoh, Shizuo Akira, Herbert W Virgin, Noboru Mizushima
FIP200 regulates targeting of Atg16L1 to the isolation membrane
EMBO Rep, 2013 Mar 1;14(3):284-91 DOI: 10.1038/embor.2013.6
オートファゴソーム膜の形成過程では、オートファジー関連(ATG)分子が必須な機能を果たしています。これらのATG分子は、複合体形成能や遺伝学的解析から、ULK1複合体(ULK1-Atg13-FIP200-Atg101)、PtdIns3キナーゼ複合体、Atg12-5-16L1複合体、Atg2-WIPI複合体、Atg9、LC3-PE結合体のサブグループに分かれています。特に、初期のステップでは、ULK1複合体(ULK1-Atg13-FIP200-Atg101)が、後期のステップではAtg12-5-16L1複合体とLC3-PE結合体が重要な役割を果たしています。
今回私たちは、異なるサブグループに属するFIP200とAtg16L1が結合していることを見出し、ULK1複合体とAtg12-5-16L1複合体が複合体間相互作用していることを明らかにしました(図A)。さらに、Atg16L1(α form)欠損変異体を用いてドメイン解析を行ったところ、230a.a.-300a.a.の領域がFIP200との結合に必要であり、この領域を欠損したAtg16L1変異体ではオートファゴソーム前駆体(isolation membrane)への選択的なターゲッティングが阻害されていることを明らかにしました。これらのことから、Atg16L1-FIP200結合を介して、ULK1複合体はAtg12-5-16L1複合体のisolation membraneへのターゲッティングを調節していることが示唆されました。また興味深いことに、Atg16L1のC末側にあるWD repeatドメインを欠損した変異体では、FIP200との結合を介さずに、オートファジーを誘導できることが分かりました。これらの結果から、私たちは図Bに示したAtg16L1膜ターゲッティングモデルを提唱しています。酵母Atg16には、FIP200結合ドメインとWD repeatドメインのいずれも保存されていないことから、これらは高等生物において獲得された新しいAtg16調節機構だと考えられました。今後は、結晶構造解析などによる、更なる検証が必要だと思われます。
FIP200との結合を介して、Atg16L1はisolation membraneへ選択的にターゲッティングする(中央)。しかし、FIP200欠損細胞やFIP200と結合できないAtg16L1変異体では、Atg16L1のC末側にあるWD repeat ドメインがAtg16L1のN末部分を阻害しており、膜ターゲッティングが阻害されている(左)。一方、FIP200結合ドメインとWD repeatドメインの両方を欠損したAtg16L1(1-230)は、isolation membraneへの選択性は失われているものの膜ターゲッティング能は有しているため、様々な膜にターゲッティングする(右)。