最近の論文発表(原著)

オートファジーは肺や浮袋の拡張に必要である(森下 et al., Cell Rep.)

2020年12月08日 最近の論文発表(原著)

Morishita H, Kanda Y, Kaizuka T, Chino H, Nakao K, Miki Y, Taketomi Y, Guan J-L, Murakami M, Aiba A, Mizushima N.
Autophagy is required for maturation of surfactant-containing lamellar bodies in the lung and swim bladder.
Cell Rep, 2020 Dec 8; 33, 108477 DOI: 10.1016/j.celrep.2020.108477

哺乳類の肺や魚類の浮袋は、それぞれ呼吸や水中での浮力発生に必須な空気を含む臓器です。これらの臓器を空気で膨らませるためには、肺胞や浮袋の内側を覆っている水の表面張力を弱めることが重要です。この役割を担うのが、サーファクタント(表面活性物質)という脂質に富む物質で、空気との境界の水面に広がって水の表面張力を弱めます。このサーファクタントは肺胞や浮袋の上皮細胞の内部に存在するラメラ体と呼ばれるリソソーム関連オルガネラで生成・貯蓄された後に分泌されますが、ラメラ体が形成される仕組みについては十分に解明されていません。

今回私たちは、オートファジーが肺や浮袋のサーファクタントの生成に必要であることを、マウスやゼブラフィッシュを用いた解析により明らかにしました(図1)。肺や浮袋の上皮細胞ではオートファゴソームと未成熟なラメラ体の融合が起きており、オートファジーを抑制すると、ラメラ体への成熟が不十分となることがわかりました。このようなマウスは出生直後に呼吸困難のため致死となり、ゼブラフィッシュは水中で浮いた姿勢を保てなくなることが明らかになりました。オートファジーの役割としては、脂質成分(膜系オルガネラやオートファゴソーム内膜)をラメラ体に供給したり、オートファゴソーム外膜をラメラ体膜に供給したりすることで、ラメラ体の成熟に貢献していることが考えられました。

プレスリリース


図1 浮袋・肺のラメラ体の成熟におけるオートファジーの新たな役割のモデル図
浮袋や肺が拡張するためには、サーファクタントが空気と水の界面に脂質一重層を形成し、水の表面張力を弱める必要がある。このサーファクタントは、浮袋上皮細胞やⅡ型肺胞上皮細胞のラメラ体と呼ばれるリソソーム関連小器官で生成・貯蓄され、分泌される。本研究の結果、ラメラ体はオートファゴソームと融合し成熟していることが明らかになった。

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