最近の論文発表(原著)

細胞小器官の膜リン脂質のユビキチン化 (坂巻 et al., Mol. Cell)

2022年09月06日 最近の論文発表(原著)

Jun-Ichi Sakamaki, Koji L Ode, Yoshitaka Kurikawa, Hiroki R Ueda, Hayashi Yamamoto & Noboru Mizushima

Ubiquitination of phosphatidylethanolamine in organellar membranes

Mol Cell. 2022 Aug 23;S1097-2765(22)00761-4. doi: 10.1016/j.molcel.2022.08.008. Online ahead of print.

真核生物に普遍的に存在するタンパク質であるユビキチンは、他のタンパク質に共有結合して、そのタンパク質の分解や性質の変化をもたらすシグナルとして働きます。これまでユビキチンは主にタンパク質に結合すると考えられてきました。今回、私たちは、細胞小器官の膜を構成するリン脂質であるホスファチジルエタノールアミンがユビキチン化されることを発見しました。これは、オートファジーに必要なユビキチン類似タンパク質ATG8(哺乳類ではLC3やGABARAP)がホスファチジルエタノールアミンと共有結合することとよく似ています。ホスファチジルエタノールアミンのユビキチン化は、エンドソームやリソソームなどの細胞小器官や一部のウイルスでみられます。この修飾はタンパク質のユビキチン化と同様の反応によって触媒されており、ユビキチン活性化酵素Uba1、ユビキチン結合酵素Ubc4/5、ユビキチンリガーゼTul1が一連の反応を担います(下図)。ホスファチジルエタノールアミンと結合したユビキチンは、脱ユビキチン化酵素Doa4により除去されるか、あるいは液胞へ運ばれて分解されます。リン脂質のユビキチン化は膜の変形や切断に関与するESCRTタンパク質複合体をエンドソーム膜に引き寄せ、エンドソーム内腔に小胞が形成する過程(腔内小胞形成)に関わる可能性が考えられます。さらに、ユビキチン類似タンパク質であるNEDD8やISG15もリン脂質と共有結合することが明らかになりました。以上の結果より、リン脂質との共有結合はATG8に特異的なことではなく、ユビキチンとユビキチンに似たタンパクが持つ一般的な特徴であることが示唆されました。

 

 

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