最近の論文発表(原著)
ヒト全遺伝子を対象とした網羅的探索による新規オートファジー遺伝子の発見(守田 et al., J Cell Biol)
2018年08月09日 最近の論文発表(原著)
Keigo Morita, Yutaro Hama, Tamaki Izume, Norito Tamura, Toshihide Ueno, Yoshihiro Yamashita, Yuriko Sakamaki, Kaito Mimura, Hideaki Morishita, Wataru Shihoya, Osamu Nureki, Hiroyuki Mano, and Noboru Mizushima
Genome-wide CRISPR screen identifies TMEM41B as a gene required for autophagosome formation
J Cell Biol, 2018, August 9 DOI: 10.1083/jcb.201804132
オートファジーは複雑な膜動態を経る過程であるため、数多くのオートファジー関連(ATG)タンパク質を必要とします。大隅良典博士らのスクリーニング以来、多くのATG遺伝子は酵母や線虫などのモデル生物を用いた遺伝学的スクリーニングによって同定されてきました。しかし、哺乳類細胞を用いた網羅的な探索は、CRISPR-Cas9システムの登場以前にはsiRNAを用いるなど非常に限定的な手法でしか行われてきませんでした。
本研究では、CRISPR-Cas9システムとオートファジー活性評価蛍光プローブを用いてゲノムワイドスクリーニングを行いました。スクリーニングの結果、新規ATG遺伝子としてTMEM41Bを同定しました。TMEM41Bは既知ATGタンパク質であるVMP1と構造的に類似しており、共通するドメインを有していました。TMEM41B欠損細胞ではVMP1欠損細胞と同様にオートファゴソーム形成が初期で阻害されました。構造的特徴と欠損細胞の表現型が類似していることに加えて、TMEM41BとVMP1は結合していることが確認されました。また、TMEM41B欠損細胞のオートファジー不全はVMP1の過剰発現によってレスキューされました。これらの結果からTMEM41BとVMP1は相互作用をしながら、オートファゴソーム形成の初期で機能していることが示唆されました。
図A) ゲノムワイドスクリーニングの模式図。オートファジー活性評価プローブ発現細胞に対し、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集を施す。オートファジー誘導時に応答しない細胞集団(オートファジー不全細胞)を分取し、次世代シーケンサーで解析すると、数多くの既知オートファジー関連分子に加えてTMEM41Bが新規に同定された。
図B) TMEM41BとVMP1はともに小胞体上に局在する複数回膜貫通タンパク質である。共通するドメイン(PfamではSNARE-Assocドメインとされていたが、今回VTT(VMP1, TMEM41B, and Tvp38: 出芽酵母の遺伝子)ドメインと名づけた。TMEM41BとVMP1は相互作用しながらオートファゴソーム形成を担っている。