最近の論文発表(原著)
ミトコンドリア上に形成されるシート状液滴とその意義 (Yang et al. EMBO J)
2024年10月25日 最近の論文発表(原著)
Zi Yang, Saori R. Yoshii, Yuji Sakai, Jing Zhang, Haruka Chino, Roland L. Knorr, Noboru Mizushima*
Autophagy adaptors mediate Parkin-dependent mitophagy by forming sheet-like liquid condensates
EMBO J. 2024 Oct 17. doi: 10.1038/s44318-024-00272-5
損傷を受けたミトコンドリアはユビキチンリガーゼであるParkinによりユビキチン化され、ミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)により分解されます。この過程では、OPTNやNDP52といったオートファジーアダプタータンパク質がミトコンドリア上に集積することが必須となります。これらのアダプタータンパク質は、サイトゾルで液滴を形成する性質がありますが、液滴形成の性質とマイトファジーとの関連は不明でした。
私たちは、損傷したミトコンドリア上に集積したアダプタータンパク質がミトコンドリア表面で相分離し、ミトコンドリアを包むシート状の液滴を形成することを示しました。このシート状液滴は、ミトコンドリア同士やミトコンドリアと隔離膜の間で毛細管現象(濡れ効果)を引き起こし、これらの膜の接触を促進すると考えられます。さらに、このシート状液滴はATG9小胞をミトコンドリア上に係留し、これがマイトファジーの進行に必須であることが明らかとなりました。
今回の研究により、液滴がオルガネラ間の接触を媒介する新たな現象が確認されましたが、シート状液滴が他のオルガネラにおいても一般的に形成されているのか、またオルガネラ相互作用に広く関与しているのかは、今後の重要な研究課題です。この発見が、細胞内でのオルガネラ間相互作用に関する普遍的な概念として確立される可能性が期待されます。
詳細については、[プレスリリース全文](https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2024/release_20241023.pdf)をご参照ください。