最近の論文発表(原著)

フェリチン-NCOA4液滴はオートファジーで分解される(大島 et al., J. Cell Biol.)

2022年08月31日 最近の論文発表(原著)

Tomoko Ohshima, Hayashi Yamamoto, Yuriko Sakamaki, Chieko Saito & Noboru Mizushima

NCOA4 drives ferritin phase separation to facilitate macroferritinophagy and microferritinophagy

J Cell Biol. 2022 Oct 3;221(10):e202203102. doi: 10.1083/jcb.202203102. Epub 2022 Sep 6.

 

鉄貯蔵タンパク質であるフェリチンは球形でかご状の複合体を形成し、内部に鉄イオンをため込みます。細胞が鉄欠乏に瀕すると、フェリチンはオートファジー(マクロオートファジー)またはエンドソームの多胞体経路(ミクロオートファジー)でリソソームに運ばれ、内部の鉄イオンを放出します。これまでに、NCOA4がフェリチンのレセプターとしてオートファジーによる分解を仲介していることが示唆されていましたが、その詳細は不明でした。
私たちは、フェリチンがNCOA4と共に液-液相分離(liquid-liquid phase separation: LLPS)によって液滴を形成し、このフェリチン液滴(フェリチン–NCOA4液滴)がオートファゴソームやエンドソームに取り込まれることを見出しました。NCOA4を中心とした多価相互作用がフェリチン液滴形成の駆動力となっており、NCOA4が単なるレセプターではなく、液滴形成に不可欠なドライバー分子(液滴形成駆動分子)であることが明らかになりました。また、オートファジーアダプター分子であるTAX1BP1がフェリチンのマクロオートファジーとミクロオートファジーに必要であることが知られていましたが、TAX1BP1はフェリチンの液滴形成には必要なく、フェリチン液滴をオートファゴソームやエンドソームへ取り込むのに必要であることが分かりました。
本研究は、細胞内鉄代謝経路の中心的過程であるフェリチン分解における液-液相分離(液滴形成)の役割を明らかにするとともに、液-液相分離とミクロオートファジーとの関連性を新たに示すものです。

 

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