最近の論文発表(原著)
TMEM41BとVMP1を含むDedAスーパーファミリーの進化と構造予想(大川, 濱, Zhang et al., J Cell Sci)
2021年04月01日 最近の論文発表(原著)
Fumiya Okawa*, Yutaro Hama*, Sidi Zhang*, Hideaki Morishita, Hayashi Yamamoto, Tim P. Levine, Noboru Mizushima (* equally contributed)
Evolution and insights into the structure and function of the DedA superfamily containing TMEM41B and VMP1
J Cell Sci, 26 March 2021 DOI: 10.1242/jcs.255877
私たちは2018年に小胞体膜タンパク質TMEM41Bがオートファジーに必須であることを報告しました。TMEM41Bはオートファジーに必須な小胞体膜タンパク質VMP1や細菌のDedAファミリータンパク質と類似した分子内領域を持ち、進化的に関連していることが示唆されていました。しかし、それらの進化的関係性や分子機能は大部分が未解明でした。そこで、本研究ではこれらの相同タンパク質の進化に着目した解析を行いました。
まず、TMEM41BとVMP1の遠縁の相同タンパク質を同定し、Graph splittingという遠縁のタンパク質に適した手法で系統解析を行いました。その結果、それらは4つのファミリーを構成していることがわかり、それら全てを包括する集団を「DedAスーパーファミリー」と名付けました。発見された4つのファミリーの中で、TMEM41BとVMP1は異なるファミリーに含まれていました。また、4つのファミリーはいずれも細菌や古細菌のタンパク質を含むことから、TMEM41BとVMP1は生物進化の早い段階で分岐したことが示唆されました。
さらに、DedAスーパーファミリーに共通する分子内領域である「DedAドメイン」について、共進化パターンに基づく構造予測を行いました。その結果、DedAドメインは、2つのリエントラントループ(膜貫通ヘリックスの折り返し)が向き合った構造を取っていることが予測されました。この構造の妥当性を、置換システインアクセシビリティ法(SCAM)によって生化学的に確かめました。DedAドメインと比較的似た構造が他のイオン共役型膜輸送体に見られることから、TMEM41BやVMP1も何らかの分子の輸送を通じて、オートファゴソーム形成などの多彩なプロセスに関与している可能性があります。
本研究の成果は、オートファゴソーム形成の分子機構およびオートファジーそのものの進化的起源を考察する上でも有用な洞察をもたらすものです。
DedAスーパーファミリーは4つのファミリーで構成されている。TMEM41ファミリーとVMP1ファミリー(黄色)は原核生物と真核生物のメンバーを含み、DedAファミリーとPF06695ファミリー(緑色)は主に原核生物のメンバーと植物やSAR(Stramenopiles、AlveolataおよびRhizaria)の数種のタンパク質を含む。DedAドメインは、DedAスーパーファミリーのタンパク質に共通して、2つの向き合ったリエントラントループ(オレンジ色)を持つことが予測されている。