最近の論文発表(原著)

ユビキチン様ATG結合系の進化的多様化 (Zhang, et al., Autophagy)

2022年04月20日 最近の論文発表(原著)

Sidi Zhang,Euki Yazaki,Hirokazu Sakamoto,Hayashi Yamamoto &Noboru Mizushima

Evolutionary diversification of the autophagy-related ubiquitin-like conjugation systems

Autophagy 2022 Apr 15;1-16. doi: 10.1080/15548627.2022.2059168.

オートファゴソームの形成には、二つのユビキチン様結合系(ATG8とATG12結合系)が重要です。ATG12結合系では、ATG12とATG5が共有結合することが必要とされていましたが、一部の生物(アピコンプレックス門原虫やコマガタエラ酵母)ではATG12とATG5の非共有結合性複合体が同じ役割を果たすことを、私たちは以前報告しました。そこで、ATG結合系のさらなる多様性について解析しました。

多くの真核生物は非モデル生物であるため、基準となるゲノムやゲノムアノテーションの情報が不十分です。そこで私たちは、真核生物の多様性を代表する94種の生物が含まれるトランスクリプトームデータベースを作成し、網羅的に相同タンパク質を同定しアノテーションする方法を確立しました。この方法を用いてATG結合系のタンパク質を調べたところ、ATG12とATG5の共有結合に必要なE2酵素ATG10やATG12のC末グリシンが多岐にわたる生物群で、独立に16回以上失われていることがわかりました。従って、ATG12とATG5の非共有結合性複合体への退縮進化は、以前の報告よりもっと広い範囲で発生していたと考えられます。そのほか、ATG12結合系を持たない生物や、ATG8タンパク質のみを持つ生物も存在します。繊毛虫門のテトラヒメナは、膜貫通領域があるATG8を持っているため、ATG結合系を頼らずに膜と結合している可能性があります。

次に、ATG結合系の進化を解明するために、ATG8やATG12を含むユビキチン様タンパク質の系統解析を行いました。その結果、ATG結合系は、ユビキチン、SUMO、NEDD8などとは独立にURM1様祖先型結合系から進化していること、ATG8はATG12より祖先型に近い可能性が示唆されました。

本研究は、真核生物におけるATG結合系の全体像を明らかにし、ATG結合系の進化やオートファジー経路の多様化に有用な情報をもたらすものです。

お知らせ一覧にもどる

ページトップへ戻る

Mizushima Lab